インターネットでの選挙運動を標準化せよ

2003年08月10日 00:00 : Trackback (0) : このエントリーを含むはてなブックマーク

高橋茂(株式会社アイランド・ボイス取締役)

聞き飽きた方も多いだろう。公選法にはインターネットに関する規定が何も無いため、選挙でインターネットを使用する場合は制約が多く、厳密に言えば何をやってもグレーゾーンとなる。そこで総務省では、2001 年10 月に「IT 時代の選挙運動に関する研究会」を発足し、有識者による13 回のディスカッションを重ね、2002 年8月に報告書を提出した。
http://www.soumu.go.jp/singi/pdf/houkokuyoushi.pdf

この報告書は、選挙におけるインターネット利用を解禁するという観点でまとめられている。以下に、報告書の「まとめ」を一部抜粋する。

(1)現行の選挙運動規制は維持しつつ、新たにインターネットによって選挙運動を行うことを可能とすること。
(2)インターネットによる選挙運動については、ホームページによる選挙運動のみとすること。
(3)ホームページによる選挙運動については、全ての選挙について導入することとし、また、量的な制限は設けないこととする。
(4)ホームページによる選挙運動については、候補者又は政党以外の第三者が選挙運動を行うことができるようにすること。
(5)選挙運動を行うホームページは、第三者による書き込みを行わせることができるものとすること。
・・・(6と7は資金管理について)
(8)ホームページ上のなりすましや誹謗中傷の対策としては、ホームページの開設者に電子メールアドレスの表示を義務付ける等の措置を講じることにすること。
(9)当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会においては、有権者及び候補者等の便宜を図るため、候補者(比例代表選挙にあたっては政党)のホームページアドレスの周知を図るなど利用の便宜性に努めるものとすること。

現状の公選法の制約を認めつつ、解禁にむけた提言がなされているところは評価できるのだが、私は以下の点で不十分だと感じた。
1.(5)の第三者による書き込みに関しては、政治参加を期待するところから来たものだが、選挙期間中の候補者への書き込みが政治参加につながるというのは現実的ではない。むしろ、荒らしや冷やかしなどへのマイナスの可能性のほうが強い。

2.(8)に関して、メールアドレスの表示を義務付けることとしているが、悪意のあるホームページや、一般の掲示板でのなりすましや誹謗中傷こそが問題であり、その対策としては意味がない。

3.選管でのホームページの公設運営も検討されたが、統一化されることによる「候補者の個性的な訴えかけが不可能」との理由から公営制度は設けないとした。しかし、「個性的なデザイン」=「個性的な訴え」は必ずしも真ではなく、自由なホームページ開設は、文書と同様に費用の増大を招くことにつながる。ここでは、3に関してさらに説明する。

スペースの狭い選挙公報や、顔も名前も出せない法定ビラは、「候補者の個性的な訴え」とはおそらく無縁のものになっている。候補者に関して有権者が知りたいことは、主に顔、プロフィール、理念、政策、活動内容、スケジュールだと考えられる。これらの項目に関しては、ホームページ制作業者によるデザイン主体のホームページよりも、シンプルなレイアウトで同じ項目を"比べられる"ことが有権者にとって望ましい。そして、「全ての候補者のホームページが同じ場所に並べられている」ことが、選挙においては重要なことだ。つまり、選管のサイト内に全候補者の標準化されたホームページを開設するのである。

ここで一番気になるのは「個性」だが、標準化されたホームページでも、本人に魅力があれば十分に個性を発揮するのは可能だ。これは選挙だけでなく、日ごろの政治活動にも言えることであり、選挙のためのホームページを選管サイト内に開設し、それ以外の候補者の個人的なサイトや勝手連サイト的なものを、告示日以降更新不可とした方がずっと現実的であり、よりお金のかからない選挙に結びつく。

(株)アイランドボイスでは、まず政治活動においてこの考えを実現しようと、昨年暮れに「ネット参謀ポリティクス」というシステムをリリースした。

これは、ホームページの自動更新機能(プロフィール・ボード)、スケジュール管理、メーリング・リスト、メールマガジン管理、スタッフ管理という、政治活動でのインターネット活用に最適なツールをまとめたものだ。プロフィール・ボードのレイアウトは標準化されたものだが、ユーザーは見事に自分の政治活動の表現を行っている。そして、このユーザー(議員や市民)のネットワーク構築とサポートを目的としたサイト「市民ネットワーク」も立ち上げた。
http://www.islandvoice.net/

「個性を出したい」と主張し、クイズや後援会のイベントの写真を掲載しているような議員の方々には是非見ていただきたい。ホームページのデザインが主張する"個性"のいかに薄っぺらなことか。タイムリーに自らの言葉を語る政治家の前では、かえって滑稽さすら感じさせる。

このような政治活動用のプロフィール・ボードと同様のものを選管ホームページ内に選挙期間中だけ開設するというのが、私の主張だ。内容は自由に書き換えが可能で、候補者は文章を考え抜き、写真を選び、自らの言葉で有権者に語る。Eメールはスタッフの連絡用に限定し、第三者の開設するホームページに関しては公式のものと区別できるので、特に制約をつけない。ついでに言えば、意味のない法定ビラやポスターも標準化し、法定ビラは選挙公報と一体化させ、公選はがきは廃止する。

誤解のないように書いておくが、ここで「標準化」といっているのは、まったく同じデザインにするのではなく、同じツールを使い、自分のイメージに合うものを選択していくということだ。これはポスターにも当てはまる。

これにより、選挙にかかる費用は削減され、インターネット上の選挙運動や候補者の主張も有権者本位になっていくだろう。「費用をかけず」「公平に」という意図で運営されている公選法であればこそ、柔軟な発想で「標準化」「選管サイト内でのホームページ公設化」を是非実現していただきたい。

http://www.voicejapan.net/postmail/postmail.html