「自治体行政の基礎の基礎からみた 自治体サービスの客体(相手方)」 (自治体選挙制度改正への基礎問題)
2004年07月10日 00:00 : Comments (0) : Trackback (0) : このエントリーを含むはてなブックマーク

八十恒人(新宿区役所保育課長)


 1 国にはボーダーライン(国境線)がある。自治体にも行政堺というボーダーラインがある。
 国レベルにおけるボーダーレス化はグローバル化の中で論議される事が多いが、自治体におけるボーダーレス化はあまり論議されない。最近は、市町村合併問題を受けてあらためて自治体におけるボーダーラインがクローズアップされている。自治体合併に際し課題になる住民意識の根底に、その地方または地区の文化、方言、神社の氏子といった、国際紛争の根源である宗教・民族・言語といった縮図が見られる。表向きは単純には議員や自治体職員の権限権益や住民にはメリットがないといった形で、合併出来ずに終わることが多い。

2 そもそも国民とは、憲法論議は別として、属地主義の範囲内で属人主義の実定法根拠である国籍法、戸籍法、出入国管理及び難民認定法で縛る事ができるが、市民(区市町村民)とは、別図Aにあるように相当多岐に渡り、また、自治体のサービスによっては、多種多様な市民が出現してくる。日本国憲法、地方自治法が出来た頃は、「居住移転の自由」を唱えることが精一杯であったが、現在はマスメディアによって市民の日常生活圏域は相当拡大している。社会生活が相当変遷しているにもかかわらず「法」が遅れているとみるか、自治体行政のサービスの提供先を余りにも広げすぎたとみるかは議論の余地はある。しかし、現実問題として、自治体の基礎の基礎である市民(区市町村民)をどう捕捉するかは、自治体の財源構成、サービスのあり方、地方選挙制度のあり方、しいてはその自治体の存続の意義を問われることになる。国からの機関委任、団体委任事務をこなし、交付金生活に甘んじていた頃は良かったが、今改めて自治体行政サービスの提供先として、また自治体行政運営の「協働」者として「市民」の定義を問い直す必要がある。

3 次にもう1点、重要な基礎の基礎がある。それは年齢である。民法第3条に、「満20年ヲ以テ成年トス」となっている。この条文が出来てから100年余り、日本国憲法以前である。喫緊に18歳とする法改正が必要である。そのことによって自治体の選挙制度や、児童福祉法、労働関係法令、刑法関係など相当広範囲に良い法効果をもたらす。自治体の選挙制度ひとつをとっても、関心度向上、投票率向上につながるものである。

4 次に別図Aについて簡単に説明しておきたい。これは「人」を分けたものであるが、もっと詳細に根拠法令や行政サービス内容を書けばわかりやすいが、字数に限りあるのでこの分類で説明する。例えば、区民と区民外区民に分けているが、これは2003年8月25日から始まった住民基本台帳ネットワークによる「住民票」の広域交付サービスがこれに該当する。今までは自治事務として、その自治体に住民登録している「市民」と債権債務関係にある企業等の利害関係者等だけがその者の「住民票」を請求していた。これからは、例えば新宿区に遊びにきた者や単に立ち寄った者でも「住民票」を請求することが出来る。これは自治体の行政サービスを越えて、国のサービスである「法定受託事務」になるものである。地方分権の再考対象事務である。このように一つひとつを解析していけば、財源構成の算定根拠に大きな影響を及ぼすものであり、今後地方交付税等の算定論議の際にも、また、「超過負担」や「態様補正」論などにも組み入れてか考察する必要がある。
また、各自治体で問題になっている「住所不定者」をどの様な形で「住民」サービスの客体として捉えるか、それによって政策レベルが違ってくる。「国民」と捕らえれば国策で生活保護を行なうべきであるが、「住民」と捉えれば、自治体の政策範囲内の客体になる。
さらに、基礎的「住民」をどう捉えるかによって、年金、国保、介護や保健衛生等の政策客体が相当変わってくる。もう一度、自治体間の「ボーダーレス化」の中で、自治体サービスの有り様を考える時に、自治体行政サービス提供先としての「市民(区市町村民)」について分類し再検討してみる必要がある。

*1950年生まれ 新宿区役所 区民課長を経て、現在、福祉部保育課長。「新宿自治体政策研究会(社稷の会)」を主宰。
当会編集による「新宿自治体政策への挑戦」(ぎょうせい)を出版(2003年再版)