「おもちゃ化」された住民

2005年04月11日 14:59 : Trackback (0) : このエントリーを含むはてなブックマーク

渡瀬 裕哉(特定非営利活動法人政策過程研究機構 理事)


行政機関の「住民との協働」という言葉に憤りを感じることがある。そして、その憤りの対象は行政機関が生み出した民生委員を代表とした「〜委員」制度に対して向いている。行政機関は各委員を召集して施策の実行を手伝わせることで、自らの施策目的を達成しようとしてきた。しかし、その組織形態は縦割りであり、透明性に欠け、実効性も疑わしい委員が多い。志のある一部の地方自治体は状況改善に取り組み始めているが、多くの地方自治体では依然として放置したままである。過去の反省をする事なく「住民との協働」を推し進めれば、再び同じような構造的な問題を抱える事になるだろう。今回は、この問題を通して行政機関と住民の関係について検討してみたい。

私は、この委員制度を行政機関による住民の「おもちゃ化」として捉えている。従来、行政機関各部署で必要が生じるたびに各委員に住民を任命してきた。まるで、我侭な子どもが新しい「おもちゃ」をねだるように、次々と委員を作り続けてきたのである。その結果、現状の「〜委員」は「明るい選挙」「環境」「児童」「民生」など縦割り構造に組み込まれて、制度の大枠すら理解することさえ難しい状況になっている。地方自治体の現場は片付けられない子ども部屋のように、このような委員がバラバラと散らばったままである。

本当に住民はそのような委員を必要としているのだろうか。また、これらの委員はその担い手が減少しており、本来制度の続行が危ういものが多いのではないか。実際に委員の候補を選定する際に、町内会に無理に頼み込んで委員をお願いしている例は多いだろう。その結果として、住民の間には委員のやらされ感が生まれており、本当の意味での協働に成っていない。行政機関は委員に対するニーズの変化や担い手不足から目を逸らさずに制度の課題に真摯に取り組むべきである。

もちろん、私は各委員、町内会、自治体職員の方々の努力を否定する気は一切ない。むしろ、これらの方々の熱意をより生かした地域づくりを切望する者である。しかし、現状のシステムはその熱意を生かすことを目的に作られていないのではないか。現状のシステムは行政の都合によって作られた、住民を「おもちゃ化」するシステムである。住民と行政が対等なパートナーシップを築くためには、「NPOとの協働」という新しい試みだけでなく、既存の関係の見直しを含む抜本的な発想の転換が急務である。団塊の世代の引退を控えて、地域資源を有効に生かせる枠組みづくりを真剣に議論するべきである。
(yuya1@cts.ne.jp)

*早稲田大学院公共経営科在籍。NPO法人政策過程研究機構(PPI)理事・パブリックマネジメントユニットマネージャー。専門は公共経営論。複数の地方自治体に対する行政改革支援業務に携わる。