沖縄科学技術大学院大学と沖縄振興

2005年05月11日 20:23 : Trackback (0) : このエントリーを含むはてなブックマーク

◎河野 涼子(所属 参議院第一特別調査室 調査員)

 現在、沖縄県に世界最高水準の国際的な自然科学系の大学院大学(沖縄科学技術大学院大学)を設置する構想が進められている。講義や会議は英語で行われ、教授陣や学生の半数以上を諸外国から受入れるなど、国際的な連携や産学連携を特徴とし、既存の日本の大学にとらわれない新しい形態を目指した大学である。

 初代学長には、シドニー・ブレナー氏(ソーク研究所教授、ノーベル生理学・医学賞受賞)が内定しているほか、ジェローム・フリードマン氏(マサチューセッツ工科大学教授、ノーベル物理学賞受賞)、有馬朗人氏(元東京大学学長)、黒川清氏(日本学術会議会長)、利根川進氏(マサチューセッツ工科大学教授、ノーベル医学・生理学賞受賞)といったメンバーが構想に関わる関係者として名を連ねており、構想に対する期待の高さがうかがえる。

 2005年度中には、大学院大学の準備機構として独立行政法人沖縄科学技術研究基盤整備機構が設立される予定であり、現在も構想の実現に向けた取組が進められているところである。

 それでは今回、このような世界最高水準の大学院大学を、沖縄県に設置する意義はどこにあるのであろうか。

 沖縄県には本土復帰以来30年余りもの間、社会資本設備等における本土との格差是正を図るため、累計7兆円以上もの振興開発事業費が投入されてきた。しかし、依然として低い県民所得や高い失業率に示されるように、現在でも自立型経済の構築が最重要課題となっている。

 大学院大学構想は、このような課題を抱えた沖縄において、科学技術の振興を図り、アジア・太平洋地域の国際交流拠点とすることで大学院大学を中心とした知的クラスターを形成し、沖縄振興を図ろうとするものである。2004年3月に制定した新たな沖縄振興の大綱を定める「沖縄振興特別措置法」において、その設置が規定された。

 沖縄県は、@日本で唯一の亜熱帯地域で豊かな自然環境を有しており、研究者等の生活環境面で魅力を持っていること、A東京、ソウル、上海、香港、マニラといった東アジアの主要都市と1,500km圏内にあり、地理的側面で優れていること、B米軍の子弟のための教育機関や病院等が既に存在するなどから、外国人を受入れやすい環境を備えていること、CITの整備によって、東京などの大都市圏から遠隔地にあるという距離の不利性は十分克服できることなどから、他の地域と比べても、沖縄県に大学院大学を設置する意義は大きいといえる。

 その一方、大学院大学では、教授や学生の選考に関して沖縄県に特別の募集枠は設けない方針であることから、あくまで、沖縄県という枠組みにとらわれることなく、世界最高水準の大学院大学を目指していることが感じられる。

 大学院大学の設置が沖縄の振興に直結するというわけではなく、そこに至るまでに、優れた研究設備の整備、交通アクセスの改善、研究費や優秀な人材の確保など、様々な条件を整備していくことが必要である。そしてその結果として、将来的には、大学院大学と県内企業や研究機関との産学連携が進むことによって、新たな産業が創出され、産業の高度化が進展し、沖縄の振興に資することが期待される。
(ryouko_kouno@sangiin-sk.go.jp)

*中央大学総合政策学部卒。参議院事務局に勤務し、第一特別調査室で沖縄及び北方問題に携わる。