東アジアに多国間協力機構の構築を
2005年12月10日 00:00 : Comments (0) : Trackback (0) : このエントリーを含むはてなブックマーク

松井 一彦(参議院第一特別調査室 調査員)


2001年10月の小泉総理の訪中以後一度も日中両国首脳の相互訪問が行われていないことに表れているように、現在、日中の政治関係は非常に悪い状態にある。他方、民間レベルの日中交流は経済面を中心に活発さを増し、それに伴って両国民相互の関心も高まりつつある。
中国政治・経済の今後の見通しについては様々な見方があるが、中国が高度経済成長をこの先も持続させれば、将来中国が日本に匹敵する規模の経済大国になることを否定する者はいまい。一方で中国はエネルギー不足に直面しているので、強力な軍事力と伸張しつつある経済力を背景に積極的なエネルギー外交を展開している。こうしたことから、中国が近い将来、日本外交にとって強力なライバルになることは間違いないであろう。しかし、日中両国は地理的に近く、東アジアにおける様々な利害が競合すること、また朝鮮半島の非核化など東アジアの安定を確保する上で中国の果たす役割は決して無視できないことを考えれば、日本は中国をライバルとしてとらえるだけでは不十分である。日本は中国を、共に繁栄し共に利益を得るパートナーしてもとらえ、日中両国の安定した関係を築いていくことが必要である。
他方で、日米同盟が日本外交のバックボーンであることは事実である。日米同盟は東アジアの多くの国々で、地域を安定化させるものであると認識されていることから、それを維持・強化させていくことも重要な課題である。
日本外交にとっての最大の課題は、日中関係の発展と日米同盟の維持・強化とをいかにして両立させるかである。これについては、そもそも両立はできないのではないかという見方さえある。しかし、米中両国いずれも日本にとって重要であることを考慮すれば、いかにして日中関係の発展と日米同盟の維持・強化とを両立させるかを真剣に考える必要があろう。
最善の方法は、日・米・中の三国がともにパートナーになり、いずれも何らかの利益を得る方策を確立することである。現在、朝鮮半島の非核化を目指して行われている六か国協議もその一つであるが、これだけでは不十分である。たとえば、アジア開発銀行やAPECのような既存の組織を改組して、東アジア経済開発協力機構を創設し、日米中が主要なメンバーとして、東アジアの開発や経済問題解決のために知恵を出し合うことも検討に値しよう。中国は高度経済成長の陰で様々な問題を抱えているため、上のような多国間協力メカニズムの創設は同国に大きなメリットを与えるであろう。また日本や米国も、その機構を通じて中国の経済社会の構造改革を促すことも可能になるであろう。
こうした努力が積み重ねられれば、日米同盟が維持されつつ、さらに日中関係が発展するだけでなく、現在注目されている東アジア共同体構想も絵に描いた餅にとどまることなく、やがては現実のものになっていくのではなかろうか。
(kazuhiko_matsui@sangiin-sk.go.jp)

*1959年生まれ。2004年7月より現職。専門はアジア太平洋地域の政治・安全保障。最近の論文に「米ブッシュ政権の外交―その特色と変化を探る」『立法と調査』(2005.11)。