[ISFJ政策フォーラム2005優秀論文](最優秀賞受賞)企業による経済性と社会性の両立―容リ法における拡大生産者責任のあり方を問う―
2006年02月10日 00:00 : Comments (0) : Trackback (0) : このエントリーを含むはてなブックマーク

◎薄井寛、竹中恵実、鳥居長英 (中央大学総合政策学部 横山彰研究会)

ISFJ政策フォーラム優秀論文の掲載にあたって
 ISFJ(日本政策学生会議)とは、学生による政策提言から、「日本を変える」ことを目指して1994年に結成された学生集団です。政策シンポジウム等の企画を通じて、社会への情報発信を行っています。2005年12月3・4日に行われた「政策フォーラム2005」では、24大学の62ゼミが政策提言の発表を行い、最優秀・優秀論文を決定しました。政策空間では、優秀論文のダイジェスト版を毎月数本ずつご紹介していきます。


1.企業による経済性と社会性の両立の必要性
 本論文では、近年議論が盛んに行われている企業の社会的責任と、企業に課せられる拡大生産者責任に対する企業の取り組みに着目した。企業は、経済合理性をもつ存在として利潤追求をその行動原理としているが、利潤追求のみを求めるのではなく、社会性をもつ存在として法の遵守や環境負荷の低減といった行動をすることを社会から求められている。だが、このような企業の社会的責任と拡大生産者責任に対する取り組みが、企業の利潤追求行動と乖離したものであっては、これらの取り組みは持続性を持つことはない。これらの活動は経済合理性と整合性を持つことではじめて、持続性を帯びた活動として企業と社会の双方にとっての利益を両立させるのである。そこで私たちは、拡大生産者責任とそれに対する企業の取り組みのあり方について考え、その事例として「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律(1995年制定。以下、容リ法)」における拡大生産者責任の概念とその仕組みに焦点を当てた。

 容リ法については、企業による容器包装排出量の削減努力に伴わない企業への費用負担や、フリーライダーの存在による社会的コストの不公平な負担といった問題が生じている。これらは企業の利潤追求行動に支障をきたし、企業による拡大生産者責任への取り組みの持続性に欠けるのではないかと考える。そこで本論文では、これらの問題を生み出す原因を分析し、容リ法における企業の拡大生産者責任への取り組みが、企業の利潤追求行動と整合性を持つものとして、企業と社会、双方の利益を両立させる取り組みとなるよう、企業の容器包装排出量削減と費用削減を同時に実現するための政策的インプリケーションと、フリーライド抑止のための政策的インプリケーションを模索する。

2.企業による取り組みが持続性に欠ける容リ法
 容リ法とは、家庭排出ごみの約60%を占める「容器包装廃棄物」を対象とし、その削減と再資源化を目的とした法律である。家庭排出ごみの処理費用はこれまで自治体が負担していたが、拡大生産者責任の概念が国内で初めて導入された本法が制定されたことにより、容器包装を使用する企業(以下、特定事業者)は容器包装製品の再商品化にかかる費用を負担する義務を負うことになった。
容リ法の拡大生産者責任においては、特定事業者によるプラスチック製容器包装排出量の削減と、それに伴う特定事業者の再商品化委託料金負担削減の実現を両立していないために、特定事業者による取り組みの持続性に欠ける。容リ法における拡大生産者責任が、特定事業者の利潤追求行動と整合性を持つ仕組みになっていない現状として、1)特定事業者による容器包装排出量の削減努力に伴わない再商品化委託料金負担、2)フリーライダー事業者の存在による再商品化委託料金の不公平な負担、の2点の問題があがっている。
 容リ法施行後、特定事業者による排出量削減努力が見られることから、排出量削減という社会的視点からみても、特定事業者による持続的な取り組みは有効と言える。さらに、拡大生産者責任が初めて導入された本法が各種リサイクル法に与える影響の大きさ、昨年度から現行法の見直しが行われていること、多くの大規模事業者が現行法に対して不満を示していることからも、本法の問題点を検討する重要性は大きい。

3.企業の利潤追求行動と整合性を持たない仕組みとして発生する問題の要因分析
 現状分析の目的は、プラスチック製容器包装についてのみ拡大生産者責任に対する取り組みが利潤追求行動と整合性を持たない仕組みとして存在し、1)特定事業者からのプラスチック製容器包装排出量を削減しても、特定事業者が負担する再商品化委託料金の費用が低減されていない状態、そして2)本来再商品化委託料金費用を支払うべき特定事業者のフリーライド分の再商品化費用が、現在再商品化費用を支払っている特定事業者の再商品化費用に上乗せされ、肩代わりが起きているというふたつの状態がなぜ発生しているのかについて明らかにすることである。
 分析手法については、1)が起きている要因を明らかにするため、再商品化委託料金算定式と他種容器包装との比較分析を行った。また2)については、算定式の仕組みについての分析、法的拘束力の効果についての分析、そして監視コストについての分析を、先行研究やヒアリング調査を基に行った。
分析結果としては、1)は、@再商品化義務総量の増加、A市町村回収見込み量の増加、B落札見込み単価の高騰、C材料リサイクル優先の仕組み、の四つが要因となって引き起こっていることがわかった。また2)は、@フリーライダー分が算定式に考慮されていないということ、Aフリーライダーへの拘束力の規制が低いということと、Bフリーライダー監査に伴う監査コストを捻出できていないために、起きているということがわかった。

4.政策提言―材料リサイクル優先制度撤廃による落札単価の低減と、フリーライダー対策―
提言1: 材料リサイクル優先制度の撤廃
政策手法は、落札段階において材料リサイクル優先制度を撤廃すること。政策目標は、材料リサイクル制度優先の仕組みを撤廃することで、プラスチック製容器包装の落札単価が前年比で7%下落(あくまで平均値であり、年度によって比率は異なる)する状態を実現することである。
この落札単価の低減が実現されることで、排出量削減に伴って、前年と比べて排出量の削減が達成されれば、再商品化委託料金も低減されるような環境となる。

提言2:効率的なフリーライダー監査の仕組みの
構築
フリーライダー対策実施のために財源確保が必要となる。政策目標は、低コストでのフリーライド抑止力がある仕組みを構築することで、フリーライダーの発生抑止力を高めることである。
(w3105020@fps.chuo-u.ac.jp)

<参考文献>
環境省 中央環境審議会廃棄物・リサイクル部会 報道発表資料 
「容器包装リサイクル制度 見直しに係る中間取りまとめ」
http://www.env.go.jp/press/file_view.php3?serial=6951&hou_id=6152(掲載:2005年6月)

経済産業省産業構造審議会環境部廃棄物・リサイクル小委員会 容器包装WG
「容器包装リサイクル制度の評価・検討に関する中間取りまとめ」 
http://www.meti.go.jp/feedback/downloadfiles/i50701kj.pdf(掲載:2005年6月30日)

(財)日本容器包装リサイクル協会 プラスチック容器事業部
「平成16年度業務報告」(掲載:2005年6月24日)

*中央大学総合政策学部3年在学。横山彰事例 研究会11期企業班として、グループで論文を執筆。