自治体倒産時代に備える

2006年07月10日 00:00 : Trackback (0) : このエントリーを含むはてなブックマーク

◎小島卓弥(ウッドランド株式会社コンサルティング事業部 チーフコンサルタント)

1.はじめに

この6月20日に、夕張市が財政再建団体へ移行する方向性が示された。同市の例は、一時借入金の制度を悪用した特殊ケースとされる向きもあるが、「首に縄を掛け白刃の上を綱渡りする」ような財政運営を強いられている多くの自治体にとって、対岸の火事とは言い難い。

ここ数年、日本経済は着実に回復基調にあるものの、地方には未だその恩恵が行き渡っておらず、自治体も充分に租税収入が回復したとは言い難い。加えて、三位一体改革による補助金・地方交付税の削減、2007年問題による大量退職金の発生、90年代後半の景気対策に伴う地方債の償還などの問題が顕在化し、自治体財政は未曾有の危機を迎えている。その一方でこの危機を認識せず、課題を先送りしている自治体があまりに多い事に愕然とせざるを得ない。

そこで、本項では自治体が倒産に至らないために必要な方策のうち、すぐに取り組む事が可能、実現が平易なものを中心にまとめた。まずはこれらから取り組みをスタートし、自治体倒産時代に備えるきっかけとなり少しでも倒産する自治体が減ればと思う。

2.遊休資産の整理

自治体には、不動産を中心にした遊休資産が少なからず存在している。その中には道路区画整備などの際に発生した他の用途に転用しにくい短冊状の土地なども含まれている。これらの土地は、自治体が後生大事に抱えていても何の役にも立たないものであり、早急に売却すべきであるが、「入札に掛けないと売却できない」との理由で放置されている。

しかし他の用途に転用できないような土地である以上、その土地に面した所有者に買い取ってもらう以外に有効な解決策は見あたらない。二束三文でも売却すれば管理コストは下がり、固定資産税が入るようになる。これらの遊休資産に関しては、議会とも協議の上積極的に売却に掛けていくべきであり、特に転用が難しい不動産に関しては入札に掛けず、随意的な売却が可能となるよう、条例を作るなどの取り組みが必要である。

3.歳入を増やす

歳入を増やすためには、増税をするのが手っ取り早いが、自治体の場合は総務省との協議が必要である上、地域経済への悪影響を考慮すれば簡単には実施できない。しかし、増税以外にも、歳入を増やす事は可能である。

@手数料・利用料の見直し
手数料・利用料に関しては、これまで周辺自治体と横並び的に設定されるケースが多かった。また、全歳入に占める手数料の割合は2〜3%に過ぎず、充分な見直しが行われることは希であった。しかし、この財政悪化の状況下では数パーセントであれ自治体が自由に使える自主財源としての手数料・利用料は非常に魅力的な財源の一つである。

そこで、これまで不明確であった算定基準を見直し、ABC(活動基準原価計算)等の手法を用いて原価と利用者の偏在状況を明らかにした上で、見直しを進めるべきである。筆者の経験では、手数料・利用料での費用の充足率はランニングコストだけでも30〜50%程度というケースが多い。充足できていないのは、業務が非効率に運営されているケースも多いため、まずその部分の改善を進めるのが大前提であるが、その上で充足できないコストを手数料・利用料に転嫁していくことは、利用者負担の原則の視点からも重要な対策である。

A広告収入の増加
自治体は、従来「公平性」の原則に基づき、特定の企業の広告を避けるようにしてきた。しかし、ネーミングライツの売却やHPへのバナー広告の掲載などにより広告収入を増やすべく、取り組みが拡大してきた(特に横浜市の事例が著名)。

とはいえ、街のゴミ箱1つにまで広告スペースとして売却する欧米に比べ拡大の余地が多いと言える。小規模施設へのネーミングライツの適用、米国で広く普及しているオフィシャルドリンク制度など、新たな広告財源拡大を目指し検討を進めることが重要である。

4.施設管理の見直し

施設管理に関しては、指定管理者制度の導入に伴い民間企業への委託も増えた。しかし、自治体本体及び麾下の財団が管理している施設が多いうえ、「民間に委託にするにしても施設の空きスペースをテナントとする」「ネーミングライツを売る」など、コストを引き下げる事が出来るオプションを受託企業に与えていない以上、コスト削減効果は限定的なものにならざるを得ない。

施設管理に関しては、存在しているだけでランニングコストが発生し、建築後期間が経過すればするほど維持管理に費用がかかる存在である。ゆえに、まずその施設が必要か否かを判定し、施設の稼働率が低い、ランニングコストが過大に発生しているなどの施設に関しては、耐用年数前であっても破棄し、不動産を売却するべきである。

また存続させるにしても、可能な限りランニングコストが軽減するべく業務の見直しや統廃合の強化、アウトソーシングの活用などにより徹底的に見直しを図る。特に、有休スペースや施設を利用しない時間帯が存在するのであれば、積極的に民間に開放し、歳入拡大に資するべきである。

5.定員の削減

政府では、2011年までに地方公務員を金額ベースで6.2%削減する方向で、検討を進めている。とはいえ、公務員は身分保障があるため、計画的に定員を削減していく必要がある。特に、来年度に控えた2007年問題は、退職金問題という短期的なデメリットと同時に、定員削減の促進という中長期的なメリットを併せ持っており、これを有効活用する必要がある。

公務員の特性として「仕事を減らしても新たな仕事を作り出す」傾向がある以上、行政評価などで事業数を削減しても、定員削減効果は低い。むしろ定員を削減し、その範囲内で可能な仕事を実施させる方が、コスト削減には有効である。

この2007年問題を機に、自然減対応によって職員数を削減、急激に減少する部分はアウトソーシングや退職者の再任用で対応しつつ、役所全体をスリム化していく事が必要である。

6.最後に

これまで紹介してきた対策は、既に多くの自治体で多かれ少なかれ取り入れられているに違いない。ただし、それはごく一部の事象に対してのみ、ということが多いのではないだろうか。組織を倒産から救い出すには、あらゆる方策を実施し、早急な改善を図るべきである。また、当然のことながら、浮かせた費用は負債の削減に最優先に充て、一刻も早く1円でも多く負債を減らすことが、長期的な財政の再建には不可欠である。

その一方で、本当に財政的に行き詰まっている自治体は、早めに財政再建団体入りを宣言することも必要だと思う。夕張市の例のように、本体だけで290億円、人口一人あたり215万円もの赤字を積み上げてしまった場合、手の施しようがない。そうなる以前に財政再建団体入りする勇気も、自治体倒産時代の首長には求められるのではないだろうか?