Web2.0と民主主義 ―政策決定プロセスの新しい形―
2006年10月10日 00:00 : Comments (0) : Trackback (0) : このエントリーを含むはてなブックマーク

◎岩山幸洋(株式会社イクオリティ 代表取締役社長)

はじめに―問題提起―

日本がよりよい国になっていく為には、当然ながらよい政策が必要である。政策とは勿論、社会の課題に対する解決策である。その政策決定には、「そもそも何が課題なのか(=アジェンダ設定)」、「どんな選択肢がありえ、現状どう考えている人がどれだけいるのか(=現状認識)」 、「それを知った上で議論をし、判断をしていく(=オープンでインタラクティブな議論)」、このプロセスが大切であることは言に待たない。

翻って、我々は一有権者として、この政策決定プロセスに参加している・自身の意思を反映できているという実感や納得感が持てているであろうか。政治に満足しているだろうか。政治にワクワクしているだろうか。

ワクワクというと不謹慎かもしれないが、より多くの人の、幸福を最大に不幸を最小にしていくプロセスに、心躍らせることができないのは何と悲しいことではないか。アジェンダ設定・政策決定は、政治家のものでもマスコミのものでも官公庁のものでもない。有権者に本来依拠しているものだ。現状の閉塞感を打ち破っていくには、政策決定プロセスに直接有権者が参加する機会があってよい、これが筆者の問題提起である。

Web2.0と政治―ITの活用―

今、インターネットの世界では「Web2.0」や「CGM(=Consumer Generated Media)」という言葉が取りはやされている。これらの用語に確たる定義はまだないが、筆者なりに一言で言えば、ユーザーが自発的にコンテンツ作りに参加するプロセスである。例として「YouTube」という動画投稿共有型サイトが人気を博している。著作権上、一部議論の的となってはいるが、一方通行ではないコンテンツの集積・生成のプロセスに注目度は高く、利用者数はうなぎ上りである。また、筆者も「リアヨロ!」というユーザー参加型の世論調査サイトを運営している。調査テーマ・選択肢を自由に作成して投票し、その調査結果がコンテンツとなる。結果もさることながら、多くのユーザーが関心を持つテーマは議論のアジェンダとしてふさわしいと見ることもできる。このWeb2.0・CGMの考え方は、政治・政策決定へ援用されることで、閉塞感の打破に寄与できるであろう。

また、有権者の意思の施策への反映は早い方がよい。勿論、時間をかけてじっくり議論をしなければならないテーマも多いし、激情に任せた判断などは絶対にしてはならない。しかし、よりダイレクトに素早く意思を反映できる仕組みこそが、自身が参加しているという意識を高め、自身の責任を自覚し、よりよい判断をしようという動機に結びつく。素早い意見集約に向けて、PC・携帯電話等のインターネット接続は格好のツールであろう。

情報蓄積・双方向配信関連技術も発達した今、ITをフル活用したWeb2.0型の政策決定プロセスというのは、もはや十分実用段階である。

間接・直接民主主義の融合―選択代理性―

大きな方向性の共有と個々の施策が合わさってこそ、社会は前へ進む。総体としてどのような社会を創っていくのかの判断も必要であるが、施策毎に判断していくという面もあってしかるべきである。大胆に言えば、もはや政党が政策群をまとめて提示するというだけでは、時代に即していない状況も出てきているのではないだろうか。より、個々の政策・意志決定プロセスに有権者を巻き込んでいくべきであろう。
 もちろん、一人の人間があらゆるテーマに意思を持つことは現実的に難しいし、政治家・政策決定者もあらゆるテーマに精通することは不可能である。

ならば、「通常はテーマ毎に、自分の意思を託せる人間に自身の投票権を委ねておき、その者が投票した場合に委託を受けた人数分だけの票が入る」、「但し、重要テーマに関しては直接自身の意思を上書きして反映させることもできる」、こういった間接・直接を融合した民主主義の仕組みが望ましいのではないか。

上記のような仕組みは、現在のSNSやブログに代表されるITの応用で難しいことではない。自身が必ずしも判断を下せないものでも、自分の意思を委託できる人を、その人が普段どのような活動・発言をしているかの履歴を元に、自身の都合が良い時にしっかりと選んでおけばよいのである。

おわりに―今後への期待―

ITを利用する場合、言うまでも無くセキュリティ等超えていかなければならない課題は多いが、どれも、一歩一歩仕組みを創りあげていけばよい。

また、直接民主主義の考え方を衆愚と結びつける論も多い。だが「賢明な有権者が判断をする」 、このことへの信頼がなければ、いかなる民主主義も成り立ちえない。であれば、有権者に十分な情報を与え、それを元にした判断が素早く現実に反映していく仕組みを作ることこそが何より重要である。

今後、行政・政治に対する有権者の直接参加というコンセプトはより多くの機会を得ていくであろう。その一助となれるよう尽力していきたいと思う。

参考
リアヨロ!(http://www.yoronchousa.net/