行政評価の「改革」を考える―より効率的・効果的な運用方法を目指して―
2007年10月10日 00:00 : Comments (0) : Trackback (0) : このエントリーを含むはてなブックマーク

◎小島卓弥(株式会社アセンディア コンサルティング事業部)

はじめに

行政評価は、1996年に三重県の事務事業評価が導入されたのを皮切りに全国の多くの自治体に導入された。三菱総研による2006年の調査[1]では都道府県で93.5%が導入し、市及び23区では導入検討中を含めて91.9%が何らかの取り組みをスタートさせていると言う。また同調査では、導入自治体の多くが「執行の効率化」や「行政活動の成果向上」に「ある程度の成果があった」と回答している、としている。

その一方で、筆者は近年多くの行政評価導入自治体の担当者から「行政評価を毎年全事業に実施するのは無駄な作業をしている気がする」、「今のままでは業務改善に繋がらない」「なんとか『役に立つ』行政評価にリニューアルしたい」と言った実施方法の見直しを要望する話が多く寄せられるようになった。そこで本稿では、普及期に入った行政評価の次のステップとして「より効率的・効果的」な行政評価の実施・活用方法を考察してみたい。

行政評価のおさらい

行政評価に関しては実施自治体や識者によってその定義が微妙に異なるが、概ね『行政の仕事を「政策・施策・事業単位」に「多視点的(効率性・有効性・公平性・公平性等)」に評価したもので、「内部評価」であることが多い』と言うフレームワークと定義が出来る。

これを実施することで政策や事業を見直し、職員の意識改革の材料としたり、公開することで自治体のアカウンタビリティを強化する等の目的に活用されてきた。また、行政評価は多くの場合、全政策/施策/事業単位で行われるケースが一般的である(例えば事務事業評価であれば全事務事業〔義務的経費分は除外することも有〕を対象に実施する事になる)。

行政評価現状の課題

この行政評価であるが、多くの自治体である種の「行き詰まり」を迎えつつあると言える。筆者が自治体職員から耳にする問題点を整理していくと、以下の3点に集約される。

(1)行政評価が具体的成果に結びつかない事へのいらだち
(2)行政評価を実施する各課職員の疲弊
(3)行政評価のみならず行政改革全体への飽き

現状の行政評価は決められたフォームに記入していくケースが多い。とは言え、記載項目が毎年大幅に変らず、予算・決算額や利用実績など定量的に変化が見られた部分のみ修正するケースが圧倒的に多い。とは言え、現場の職員にとっては所管業務で忙しい状況下で、予算や定員の評価に使われるでもない、数字の穴埋めだけで改善が進むわけでもない作業に従事させられている「やらされ感」が高まっているのではないだろうか?

行政評価再生計画〜行政評価のリサイクル

そこであくまで筆者の私見であるがこのような問題を解消するために「行政評価による業務の効率化・本質化の実現」と言う視点で見直していくと以下のポイントに整理できる。

@問題がある事業に絞り込んで実施する。

行政評価ではないが、筆者もある政令市でABC(活動基準原価計算)による業務の見直しで、全庁の3000以上ある事業の中から各局から「原課レベルでも問題視している様な事業のみ」15事業に絞り込んでから業務・事業の見直しを行い、結果6億円以上のコスト削減を実現したことがある。これと同じように「原課ですら廃止したい」と考える問題事業を抽出し、それを集中的に見直す事で数は少なくても確実に効果を上げる事が期待できる。

A長く続いている事業を対象にする

パーキンソンの法則にあるように、行政業務は事業の政策的なニーズが失われても、膨張し続ける傾向がある。特に我が国の自治体は新規事業を立ち上げ予算を確保するまでに膨大な労力を要する一方、一度開始された事業を縮小したり廃止するチェック機能が弱い。

そこで一定年数、例えば5〜10年を経過した事業に関して集中的にチェックしてみてはどうだろうか?政策的なニーズや優先度を改めてチェックし、基本的にリストラクチャリングを前提に見直しを行うべきである。

B評価の機能を追加〜トータルコスト、業務別コストの反映

行政業務の内、公共事業などを除く多くの事業のコストの大半は人件費が占めている。他方で役所の事業予算には人件費はもちろん、法定福利費や退職金給与引当金に相当するコスト、さらには減価償却費と言った発生主義的コストも含まれていない。

行政評価の主要な現状把握指標としてこの事業予算は計上されているが、人件費や発生主義的コスト等が含まれなければ片手落ちである。ABCなどにより把握された活動別コストが行政評価に追加されれば外部委託化の効果測定や、住民票などの手数料改定に資することも可能となり、事業の見直し効果は格段に向上する。

C外部評価を活用する。

職員レベルで事業を廃止しにくいのであれば外部の有識者やコンサルタントによる外部評価を行い、それをテコに見直しを行うのも効果的である。また第三者の目、特に住民の目で再評価を行うことで、本当に事業の有るべき姿が再構築される事が期待できる。

まとめ

この10年余りの行政評価の取り組みは、行政評価の必要性は広く認識される一方で、行政評価の有効性、特に業務の見直し機能の弱さへの失望と作業の繁雑さが目に付いてきた、と言う状況がある。個人的には、全政策・施策・事業に多視点的な評価をやった事は職員の意識改革という点では大いに効果があったと思う。

しかし、それを曖昧な目的意識のまま続ければ、行政評価を作成する事自体が目的化してしまう。であれば、対象業務を絞り込み、絞り込んだ分より詳細な分析や外部評価を行い、行政評価そのものの機能強化とそれによって得られる「改革の実」をより意識した取り組みに行政評価自身が「改革」されるべき時期に来ているのではないだろうか?

脚注

[1] 三菱総研・地方自治体における行政評価への取り組みに関する実態調査(2006年)
(http://www.mri.co.jp/PRESS/2006/pr061130_siu02.pdf)。