加配教員制度の運用について
2007年12月19日 00:00 : Comments (0) : Trackback (0) : このエントリーを含むはてなブックマーク

◎金子弘(郵便事業株式会社 期間雇用社員)

緒言

去る8月初旬に北海道新冠町で、加配教員制度の運用に係る不適切な事実があったことが発覚した[1]。そこで、本稿では、教育行政の法律主義[2]の視点から、加配教員制度に係る行政運営が現実どうなっているのかを明らかにすることを目的とする。

加配教員制度の趣旨

公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律の一部改正が平成13年3月に行われ、文部科学省初等中等教育局長通知[3]において、加配教員制度の趣旨は「基礎学力の向上ときめ細かな指導の充実を図るため、少人数による指導を行うための教職員配置を行う」と示されている。
また、文部科学委員会議録[4]によれば、当時の文部科学省初等中等教育局長は、加配教員は少人数指導やチームティーチング等による指導を通して子供達に分かる授業を行うことで児童生徒の学力の向上を図る観点から特別に加配されるものであるとしている。この加配教員の給与には、国からの国庫負担がある。

行政運営の実態

今回の北海道新冠町のような加配教員制度の運用に係る不適切な事実は、以前にも東京都、北海道において起きていた。

先ず、東京都では、平成14年度に練馬区で、平成15年度には、八王子市で不適切な運用を行っていた。そして、平成16年度には、板橋区で少人数指導またはチームティーチングが当初の授業計画を下回る時数しか実施していないにも関わらず、ほぼ計画どおり実施したと教育委員会へ虚偽報告をしていた[5]。つまり、不正が常套手段と化しているといえる。

次に、文部科学委員会議録[6]によれば、北海道の小樽市で加配された教員が公立小・中学校19校で教員全体の労働軽減にあてられる等の目的外使用が行われていたことが明らかとなっている。そして、小樽市議会会議録[7]によれば、平成5年に北海道教育委員会と北海道教職員組合本部との間で不適切な確認書を交していたこと等を背景として、文部科学省へ虚偽文書を提出していたとされている。このように、教育委員会・学校・教職員団体の三者が結託して、国からの国庫負担金の不正受給を謀ったことは、地方教育行政を掌る者として著しく問題があるといえる。

この他、北海道では、室蘭市や苫小牧市等でも加配申請通りに運用していなかったことが明らかとなっている[8]とともに、石川県では、加配による授業指導案等の記録がしっかりと残されていないといった事実も挙がっている[9]ことから、全国規模で加配教員制度の不適切な運用が行われているのではないかと考える。

他方、文部科学省の対応はどうであっただろうか。

文部科学大臣会見の概要[10]によれば、当時の文部科学大臣は、小樽市の問題発覚に際して、他県に関して調査は行わないが、注意喚起を行うと述べている。しかし、小樽市の一件後も既述のように、加配教員制度の運用に係る不適切な事実が出て来ている以上、加配教員制度の運用の全国規模の実態調査を行わなかったこの時の判断は甘かったと言わざるをえない。

この背景には、地方教育行政が法令違反等を行うことは考えられない[11]、お願いしていることを地方教育行政は適切に受け止めるはずである[12]という観念が文部科学省にあったこと、等が関係していると考える。

結言

以上のことから、一部の地方教育行政において、加配教員制度の適切な運用が行われておらず、教育政策法務能力[13]及び行政運営手法に著しい問題があるといえる。また、文部科学省には、地方教育行政の行政運営を統轄する機能に問題があるのではないかといえる。

よって、文部科学省は第一に、教育政策法務能力の向上方策を講じるべきであると考える[14]。

第二に、2001年度からいわゆる定数崩し[15]が行えるようになるとともに、2004年度から総額裁量制[16]が実施されており、教職員に係る「公金」の流れの透明化を図り、教職員に係る予算執行に対して、国民から信頼を得なければならない現実に迫られている一方で、チームティーチング等の実施実態は教員以外には分からず、第三者は確認できないとの指摘もある[17]ことから、教職員配置に係る地方教育行政の行政運営が法令に基づいて、適切に行われているかを厳格に管理・監査するような仕組み[18]を創設し、点検・評価機能の強化を図るべきであると考える。

脚注

[1]読売新聞、2007年8月3日
[2]文部科学省の教育政策の方向性、法令の趣旨を十分に踏まえて、教育政策を実現する手段として、教育法制度を適切に運用するとともに、ローカルオプティマムを達成するための教育政策の企画立案及びその企画立案した教育政策を円滑に推進することができる力量のこと。
[3]公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律等の一部改正等について(13文科初第444号、平成13年6月29日)
[4]第154回国会参議院文部科学委員会議録第2号(平成14年3月19日)
[5]東京都教育委員会「指導方法工夫改善定数等の適切な運用について」(16教人人第143号、平成16年6月1日)による。
[6]第154回国会衆議院文部科学委員会議録第3号(平成14年2月27日)
[7]小樽市議会「平成14年度小樽市議会会議録(1)第1回定例会」
[8]国民新聞、2002年11月25日
[9]北陸中日新聞、2002年5月1日
[10]文部科学省大臣官房総務課広報室「平成14年3月22日大臣会見の概要」(平成14年3月22日)
[11]内閣府規制改革会議イノベーション・生産性向上ワーキンググループ 教育・研究タスクフォース議事概要(平成19年3月9日)
[12]内閣府規制改革・民間開放推進会議第3回重点事項推進ワーキンググループ(教育分野)議事概要(平成18年12月5日)
[13]文部科学省の教育政策の方向性、法令の趣旨を十分に踏まえて、教育政策を実現する手段として、教育法制度を適切に運用するとともに、ローカルオプティマムを達成するための教育政策の企画立案及びその企画立案した教育政策を円滑に推進することができる力量のこと。
[14]全国どこの地方教育行政官であっても、ある一定水準の「教育行政に関する専門性」を担保するという考え方に立って、(1)教育政策法務能力の育成を目的とした専門職大学院を設置するとともに、(2)国家資格試験(弁護士や医師)のような仕組みを創設する、等。
[15]第151回国会衆議院文部科学委員会第7号(平成13年3月16日)、5頁、当時の初等中等局長発言を参照。
[16]義務教育費国庫負担金の総額の範囲内で、地方公共団体が給与額や教職員数を自由に決定できる仕組みのこと。
[17]「後掲」参考文献、128頁。
[18]総務省の行政評価・監視、あるいは旧郵政省の郵政監察制度のような仕組み。

参考文献

・岡村豊(2007)「日本の教育」、玉川大学出版部。