政党CSRの時代

2007年12月19日 00:00 : Trackback (0) : このエントリーを含むはてなブックマーク

◎渡瀬裕哉(特定非営利活動法人政策過程研究機構 理事)

CSR不在の政党運営

参議院選挙前後に「政治とカネ」の問題に代表される政治家のスキャンダルが報道の注目を集めた。しかし、国民にとってはフラストレーションが高まる状態を通り過ぎ、既に諦めにも似た飽きが生じ始めている。このような問題は政党のガバナンスに問題があるということは議論の余地はないが、それ以上に政党運営において「CSR(社会的責任)が全く意識されていないこと」にこそ今日的問題の本質がある。

政党のコーポレートガバナンス問題

CSRで求められる社会的責任とは、詰まるところステークホルダーとの良好な関係を維持することである。政党を取り巻くステークホルダーは、国会議員及び秘書、党員・サポーター 、有権者、地方支部・議員、政党職員、業界団体、納税者(政党助成金の関係等)、他の政党、政府、シンクタンクなど、多種多様である。政党にはステークホルダーに対して適切な方針を持ちサービスを提供すること、そして国民の目線から見て説明責任を果たすことが求められている。

たとえば、冒頭の政治とカネの問題である。そもそもこの問題は政党としてのコーポレートガバナンスの問題であり、各議員事務所が個別に税理士・公認会計士と契約して対処すべき問題ではない。このことは選挙の際に一議員事務所が引き起こした不祥事で政党全体のイメージダウンにつながることを見ても明らかだ。

本来、政党が所属議員事務所との関係、議員事務所と関連団体の関係などについて方針 ・プランを持ち、会計処理のルール・システムを構築することが重要であり、個別の伝票を修正して議員が謝罪したところで何ら意味がない。

ステークホルダーとの関係構築を

また昨今、主要政党の多くは党員の減少に頭を悩ませているが、それは党員への適切な対応方針を持っておらず、コミュニケーションが成り立っていないことに起因する。

「党費を支払うことで得られる対価」が党首選挙への参加と機関紙の配布等だけでは政党に所属する魅力はほとんどない。 予備選挙の実施などの新しい要求に応えることはもちろん、党員・サポーター、有権者との新しい関係構築のための基本的な方針・プランを再検討すべきであろう。

政党としての意思決定過程の透明化は政党支持者からの信頼を得る上で重要であり、党勢拡大に欠かす事ができない要素である。

上記は政党とステークホルダーとの関係を示した一例にしか過ぎない。それぞれバラバラの文脈の中で語られている政党改革の諸要素はすべからくCSRの観点から俯瞰して検討することが可能である。政党は各ステークホルダーに対して、結党の理念を振り返り、適切な方針・プランを示すべきである。そうすれば、自ずとやるべきことが見えてくるはずだ。

政党運営を発想から転換せよ

個別の議員の魅力や地盤に頼った選挙は、既に国政においては時代遅れになりつつある。自らの政党の不祥事を未然に防止し、政党としてブランド価値を高めることは小選挙区比例代表制における選挙では死活的問題だろう。

従来までの政党運営の方法を見直し、ステークホルダーとのコミュニケーションのあり方を考え直すことこそが有権者からの信頼を得るための特効薬である。表面的な制度設計を見直すだけではなく、政党運営の発想自体の転換が求められている。