米民主党政権を見据え人権外交戦略を見直せ
2008年02月27日 00:00 : Comments (0) : Trackback (0) : このエントリーを含むはてなブックマーク

◎木村優介(国際フリージャーナリスト)

米国大統領選挙において、共和党・民主党ともに激しい指名候補者争いを繰り広げている。今年実施される大統領選挙本戦で、仮に民主党が勝利した場合、アジアにおける日本の立場は共和党政権よりも厳しい立場に置かれることは明白である。

共和党政権と民主党政権の最大の違いは人権に関する外交方針の相違である。ブッシュ政権の対外的な民主化を推進していたネオコン勢力は民主党から合流した新参者が多く、本来の共和党は民主党と比べて人権問題についてセンシティブな勢力ではない。そのため、民主党政権誕生を見越すならば、人権問題を巡る鍔迫り合いは激しくなると想定し、本格的な対応体制を整えることが重要である。

特に、昨年民主党支配下の米国議会下院で決議された日本に対する慰安婦問題の決議は、国際社会における日本のソフトパワーを著しく傷つけるものであり、人権問題に関する日本の発言力の低下、ひいては対中国のアジア地域におけるリーダーシップ争いに影響を与えうる重大な事態を招いた。しかし、日本側の慰安婦問題に関する外交戦略といえば、米国で日本の立場を伝える拙い広告を実施した程度のものであり、むしろ慰安婦問題を詳しく知らない米国民に日本に対する嫌悪感を抱かせる危険性が大きいものだった。

慰安婦問題は人道上・外交上極めて繊細な問題であり、日本の置かれている立場は非常に苦しい状況にある。自らの置かれた立場を逆転することは敗戦国にとって容易なことではなく、日本側の主張である軍関与の有無などの慰安所管理における技術的な論争は焼け石に水だろう。むしろ、正面からの自らの主張を展開することは、「慰安婦=人権侵害」と考える一定以上の関心を持たない米国民・議員からは唾棄すべき対象として見なされる可能性が高い。

米国ではメディアポリティクスが発達しており、イラク戦争時の捕虜虐待の問題に見られるように、自らの過ちに関するきっかけはジャーナリズムを通してビジュアル的に伝えられる。日本が慰安婦問題で手を打つならば、専門家における人権に関する技術的な論争ではなく、米国や韓国が過去に設置した慰安所などの証拠を収集し、メディアを通して解決すべき同列の課題として提起し、米国民の有権者意識に変化を起す戦略を採用すべきである。その結果、アジアにおける日本への過去の戦争に関するバッシングに力を傾けることが難しくなるだろう。人権問題に繊細な民主党政権だからこそ、米国に自らの自己矛盾を抱えさせる戦略の有効性が増すと予想される。

インド洋での給油活動について日本の国会で攻防が行われて衆議院での再可決が実施されるなど、日本外交の進路について活発な議論がなされている。しかし、米国の状況変化を受けて、我々はより根本的なレベルにおいて、外交方針の転換が迫られていることを自覚すべきではないか。我々の新しい時代への備えは十分であろうか。