「小1の壁」解消に向けて
◎株式会社アセンディア コンサルティング事業部 小島卓弥
はじめに
「小1の壁」と言う言葉をご存じだろうか?働く女性の子育てにおいて、小学校入学前までは育児休暇や勤務時間の短縮、保育園の延長預かりなどのサポートにより比較的働きやすい環境が整えられつつあるものの、小学校に上がったとたんそれらのサポートが受けられなくなり、結果として仕事を辞めざるを得なくなるケースが社会問題となっている。
これらを支援する為「学童保育」が自治体を中心に提供されているが、「小1の壁」を回避する為のニーズに充分対応できているとは言い難い。そこで、学童保育の現状を整理すると共に「小1の壁」を乗り越えるために必要な学童保育改革に関して考察していきたい。
学童保育とは何か?
学童保育とは児童福祉法に基づき「保護者が労働等により昼間家庭にいない小学校に就学している概ね10歳未満の児童に対し、授業の終了後に児童館等を利用して適切な遊び及び生活の場を与えて、その健全な育成を図るもの」と定義されている(注1)。
全国16,685か所(公営7,409か所、民営9,276か所)でサービスが提供されている。登録児童数は少子化の中、学童保育の登録児童数は一貫して増加傾向にあり、平成13年度の452,135名(注2)から平成18年度には749,478人に上っている(注3)。
これは、女性の社会進出や核家族化の進展に伴い、所謂「カギっ子」が増加しつつある事の裏返しである。現状では既に「学童保育の待機児童」までが顕在化しつつあり、ニーズは今後更に高まることが予想される。
現状の学童保育の課題
この様に、学童保育が小学校就学以降の児童の放課後をサポートしていながら何故「小1の壁」が問題化するのだろうか?その最大の要因は学童保育施設の提供終了時間だろう。学童保育施設は季節変動があるものの概ね14~15時にスタートするが、終了時間が17時〜18時と定められているケースが多い(厚生労働省調べ(注4))

これは学童保育が保育園などと異なり一定程度、生徒の自主性に任せている部分があり、「保護者が迎えに来られなくとも子供自身で帰宅できる時間に帰らせる」事が出来る時間設定をし、これを念頭に運営されているからだと言われている。
しかしながら、9時〜17時の一般的な就業時間をベースとしても保護者が17時に帰宅、もしくは学童保育提供施設へ迎えに行くのは難しく、また残業などの発生可能性を含めれば19時くらいまでは最低でも開設していて欲しいものだが、現実には19時まで開設している児童館は全体の20%に満たない…これが「小1の壁」の大きな壁の一つとなっている。
「小1の壁」を越えるために
以上の状況を踏まえ、「小1の壁」を越えるためには19時以上、可能であれば20時前後まで預かる事が出来る学童保育施設を増設していくことが望まれる。ただし、公設の場合にはコストの兼ね合いもあり、簡単には時間延長が実施出来ない部分もある。
杉並区の事例を参考にすると学童保育でのコスト計算(ABCによる)では生徒1名当たり概ね2〜2.5万円/月のコストが発生している(注5)。通常の月額利用料が3000円+おやつ代1800円で4800円が支払われているが、コストの3/4強を税金で負担している計算になる。
そこで、現在17〜18時を目処に終了されている自治体が提供している学童保育をベースとし、例えばそれを越える18〜20時のみの分に関しては、減価償却費や施設の賃借料を除くランニングコストのほぼ全額に相当する金額を利用料として負担させる形でサービスの拡充を図ることは出来ないだろうか?
利用料の設定に当たっては1時間単位で設定し、毎日の利用を原則とする月額制と都度利用する場合の従量制を併用させ、後者に関しては30分単位の回数券的な物を発行し発行業務の低減に努める、などの方法が考えられる。
時間延長に当たり既存の職員の対応が困難であれば、学童保育全体をアウトソーシングしたり、時間延長分のみを委託する「官設半民営的」な運営方法も考えられ、実現可能性は決して低くないのである。
まとめ
我が国の少子化対策はまさに「喫緊の課題」である。他方で政府・自治体の対応は後手に廻っており、現状ひとまず保育園の拡充で手一杯、学童保育も重要性は認識されているものの、預けたい親のニーズに充分に応えられていないのが現状ではないだろうか?
学童保育の時間延長の実現に関しては財源の裏付けが必要ではあるが、時間延長分のコスト負担を保護者の完全自己負担として実施するのであればその懸念もなく、実現可能性がぐっと近づくはずである。
学童保育に関しては政府からの支援の拡充が必要なのはもちろんであるが、自治体サイドもより柔軟な発想でサービスの提供方法を見直し、学童保育を保護者にとって有用性が高いものとすることで、「小1の壁」を越えるためのキラーソリューションとすることが今まさに期待されている。
注
1.http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/houkago-jidou.html
2.http://www.gakuho-tokyo.jp/jyouhou_07/gakudou-zennkoku_070401.pdf
3.平成19年5月1日現在:厚生労働省雇用均等・児童家庭局育成環境課調べ
4.http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/02/dl/s0207-4d19.pdf
5.http://www2.city.suginami.tokyo.jp/library/file/zaisei_2006.pdf
