西澤真理子 (株式会社リテラシー リテラジャパン代表)
しょうゆ(大豆(遺伝子組み換え不分別))
生協: せんべいの表示
しょうゆ(大豆(遺伝子組み換えでない))
メーカー:お菓子の表示
「分別流通とうもろこし使用」
メーカー:スナック菓子の外箱
皆さんは遺伝子組み換えの表示をご覧になったときがあるだろうか.理解がとても難しい.遺伝子組み換えなの?そうじゃないの?混乱する.また,遺伝子組み換えではない原料を使った商品は穀物の自給率が低い日本でどこまで本当に可能なのだろうか.疑問が残る.
農薬を減らせる,土壌の流出が防げるという理由で,遺伝子組み換え作物は世界の農家に歓迎されている.作付けは年々増加し,2006年の遺伝子組み換え作物の生産は前年比較で1割り増しとなった.
日本の大豆の自給率は4%で,残りは輸入.輸入の7割がアメリカからで,そのアメリカの大豆の85%が遺伝子組み換えである.また,トウモロコシなど,動物の飼料などに使われる雑穀も日本ではほとんど作っておらず(自給率1%),9割がアメリカからの輸入である.今日ではアメリカコーンの約5割が遺伝子組み換えとなっている.
「遺伝子組み換えを使っていません」.この食品表示にはちょっとしたからくりがある.遺伝子組み換え作物は混入しているのだが,その混入が5%まで日本の法律で許されているので遺伝子組み換えが入っていても「No-GMO」になる.また,油やしょうゆには遺伝子組み換え表示の義務がないので表示がなされていない.ナタネなどの食用油は自給率3%であとはやはりすべて輸入だが,当然遺伝子組み換えが相当入っている.従って,われわれが「遺伝子組み換えでない」と思って買っている製品にも実際には遺伝子組み換え原料が入っていることが多々ある.
生協は,冒頭にあるように「遺伝子組み換え不分別」という独自の表示を行っている.不分別というのは,その文字のとおり,遺伝子組み換えとそうでないものを分別せず,どちらも原料に使っているということだ.分別(流通)は手間がかかり,厳密な分別はコンテナでの輸送の際には困難とされる.
近年の穀物原料の値上がりで,遺伝子組み換えでない作物を輸出相手国に求めることも現状では難しくなっている.この先,生産に手間のかかる 非遺伝子組み換えの作物をどこまで生産者が作ってくれるのか.先行き不透明である.
日本はコメ以外の穀物自給率が他国と比較して低く,2005年は28%だった.ちなみにフランスは173%,ドイツは101%.従って輸入相手国の経済や気候状況によって食品生産が大きく左右される.今後も,様々な商品に穀物価格の高騰の影響が出てくるだろう.食品の安全,安心議論が盛んだが,本質的な意味での「安全」である食料保障について,さらなる社会議論が必要である.身近な食品表示からも,われわれの社会のあり方を考えさせてくれるヒントを得ることができるだろう.
