米国の通商政策の行方
2008年06月14日 10:17 : Comments (0) : Trackback (0) : このエントリーを含むはてなブックマーク

―ポスト大統領選挙の見通し―
田中伸昌(所属 ジェトロ海外調査部北米課)

今後の通商政策には不透明感も
米国の通商政策の今後には不透明感が強い。まず、新たな通商協定にためらいがちな民主党に追い風が吹く状況が続いている。そして、ブッシュ減税の期限切れが議会の通商問題の審議を圧迫する可能性がある。

厳しい政治環境
民主党のオバマ候補もクリントン候補も、現在、NAFTAの再交渉を求めると公言している。メキシコやカナダが再交渉に応じない場合は脱退も辞さない構えだ。両候補とも、新たな通商協定を結ぶのではなく、既存の通商協定のエンフォースメント(実行)を強化すべきだとの立場だ。具体的には、知的財産権の保護強化や、労働・環境基準の強化を求める。こうした見方は労働団体の主張に沿ったものと言える。両候補とも本指名されれば、これまでの保護主義色の強いトーンを落す可能性はあるが、前言を完全に翻すことはできないだろう。

議会は選挙を経ても、民主党が上下両院を維持する公算が高い。これは、引退する議員の数が共和党の方が多いことも影響する。選挙では現職が有利な場合が多く、引退する議員が多ければ、それだけ、対立する党に議席を譲る可能性が高くなる。また、2006年の中間選挙で躍進した民主党の若手議員には、保護主義的な傾向が強く、今回の選挙で当選する若手議員にもそうした傾向が強くでるとの見方もある。

このように、仮に、大統領・議会選挙後に民主党大統領が誕生し、議会の上下両院を民主党が維持した場合、米国の通商政策は大きな曲がり角を迎える可能性がある。

税制問題が通商問題に影響
米国では、下院歳入委員会と上院財政委員会が通商問題と税制問題の両方を審議する。問題はブッシュ減税の多くが2010年に失効することだ。税制問題は、2010年前後、大きな焦点となる可能性が高い。そうなった場合、両委員会は、通商問題に力を割くことが難しくなる。また、その場合、議会指導部は、税制問題の審議を優先させ、政治的にセンシティブな通商問題を遡上に載せることを避けるのではないか、との見方もある。税制問題が議会での審議を圧迫するとすれば、仮に共和党の大統領が誕生したとしても、通商問題の進展には不透明感が漂うことになる。

背景にはグローバル化に対する懸念
こうした状況の背景にあるのは、グローバル化に対する懸念の高まりだ。米国では中西部を中心に失業率が高まっており、その原因が不公正な貿易にあるとする見方が多い。そうした不満が保護主義的な機運を高めている。

今後、米国が保護主義に陥ることなく、引き続きグローバル化の旗振り役となるためには、グローバル化に対する「弱者」を、教育、訓練、補助など各種の政策を組み合わせて支援し、経済の自由化がもたらす恩恵を広く説明していく必要がある。

*本寄稿は所属する組織を代表するのもではない。